胡乱な物置

自分のため。感想考察とにかく長文書き散らし

少年マガジンエッジ2021年9月号「華Doll*~Flowering~」感想

はじめに

凌駕回前半(8月号)感想

skmysn.hatenablog.com

どうかコミカライズを読んでほしい

https://magazine-edge.jp/

私の心構えについて

上記8月号の感想末尾にも述べたように、私は9月号が配信された日(8/17)、ワクチン接種2回目を済ませた直後で同人原稿の〆切が待ち構えていた。

Kindle電子書籍配信で購入しているため、0時をすぎれば配信される。この時体温すでに37.7℃。副反応は限界原稿中の身体を容赦なく襲い、死にものぐるいで原稿しながら「もうすこし健康な生活をしておけばよかった」と本当に後悔した。3日寝込んだ。同人原稿は天地がひっくり返っても間に合わなかったので早々に〆切を延ばした。

そんなわけで〆切が延びたことと何をどう頑張っても寝込むしかない未来に多少の安心すら覚えながら、私はKindleを開いた。時刻は0時3分。TLを見るとすでに何人かの先駆者の死体が見える。

8月号感想で述べたように、この9月号はAnthosの仲間から凌駕への働きかけ、そして凌駕の意識の変化が明示されることはある程度予測がついていた。

次は大丈夫。覚悟はきちんと出来ている。

本誌感想

凌駕回前半(8月号)はぎくしゃくしたふたりの関係にフォーカスしていた。それは過去に起きてしまったことに囚われて目の前の人がうまく見えなくなっている凌駕と、全てを遠ざけて独りでいようとする眞紘の見ているものの違いからきている。前回は眞紘の視点を中心に話したので、今回は凌駕回らしく凌駕にフォーカスを当てよう。

大前提として、公式が提示している公開ページ部分を見てもわかるように、凌駕はそもそもアイドルになりたかったわけではない。

彼は偽りの「夢」を愛するふりをした。

――池袋ジャックポスターより(Booklet vol.3参照)

プロジェクト始動当時から、しかし、特にMessage~For…によって明かされる凌駕の心情で、彼はAnthosとしてデビューしたいと思うようになる。それは1年を共に過ごしてきた仲間と築いた絆ゆえだ。凌駕が誰にも肩入れしないただの傍観者――天霧の内通者としていられたなら、もしかしたらそうはならなったかもしれない。

感情で特定の個人に入れ込みすぎると、自分の立ち位置を見失う

「Message」ドラマパート内発言

凌駕の場合は特定の個人に――眞紘に――入れ込んだからこそ、本当の意味でAnthosの当事者になることが出来たのではないかと個人的には考えている。誰かを大切に思うからこそ、築かれる絆もある。眞紘を心配する気持ちと、なにかできることはないかと模索する気持ちを同じくしているメンバーは、凌駕にとって間違いなく頼れる仲間だし、助け合える存在になった。それは今回の話でできたものではなく、1年以上を通じて共に過ごしてきた関係に凌駕が少しずつ自覚したものだ。時間をかけた思いほど根は長く伸びる。疾風に勁草を知るとよく言うが、これで凌駕の根は確かなものになったと言ってもいいだろう。

過去、影河凌駕は手を差し伸べられた側だ。天霧智紘が伸ばしたその手を、若かりし頃の凌駕は取った。眩いばかりの光に目が眩んだがゆえに――いや、親友と思いたい大切な友人のそばにいたいと思ったからかもしれないと、個人的には思っている。しかし、だからこそアイドルになりたいという気持ちの決定的な温度差からふたりの道は離れ、凌駕は智紘の手を離してしまった。凌駕はそれを良かれと思っていたし、分かってくれると信じていた。

そして、凌駕は智紘を失うことになる。

智紘の死の真相を求めて再びやってきた華人形プロジェクトの中で、凌駕は眞紘に出会った。そこになんの因果があるかはこの際関係ない。ただここにあるのはふたりとメンバーがそれぞれに築いてきた関係の事実だけでいい。

自分の立つ場所を確保した今、凌駕は眞紘に向けて手を差し伸べている。かつての親友と同じように。彼の弟としてではなく、ただひとりの存在である結城眞紘、その個人として。

手をのばすという行為には、相手の選択が伴う。伸ばした手に応えてもらえなければ次のステップに進むことはない。何も言われずとも救うのは庇護だ。庇護という言葉には「弱いものの立場をかばって守る」という意味がある。つまりこの言葉には、愛があろうとも明確に立場の上下が存在する。

しかし、ここで凌駕が眞紘と築きたい関係は、凌駕ソロでも繰り返し述べられているように「soulmate」だ。訳し方は様々あるが、ここではとりあえずそのまま使用しよう(あえて訳すなら「心からわかりあえる人、運命を共有する人」というのが一番しっくりくるが、長いので)。そこに上下の関係はない。そうでなくてはならない。求められずとも応える関係を悪いというわけではないが、それも一方が行き過ぎれば一種の支配だ。

だからこそ、凌駕は手を伸ばした。
「どうかこの手をとってくれ」
きっとそれは相手に対する祈りであり、同時に自分に対しての救いだ。

凌駕に手を伸ばしたときの智紘も同じだったのだろうか。この手を取ってほしいと願って、その手が離れていくのを彼はどんな気持ちでいたのだろうか。

それを推し量ることは、今の私達にできないのだが。

今2ndシーズンが展開されている中でこの先に何が起こるのかわからないが、アイドルたちにとってよりシリアスな展開になることは公式から明示されてしまった。

hana-doll.com

この先どうなるのかはわからない。それでも凌駕はこれから先、眞紘の手を離すことはないのだろう。そうであってほしいと、願っている。

 

最後に。一時の安寧でもいい。眞紘が心から笑ってくれてよかった。

次回に向けて

ついに次号からは(おそらく)眞紘の回になる。陽汰回で記者の言葉を意味深に出したわりにはあっさりと本編の内容を吸収して薫回へ行ったことも鑑みると、眞紘が咲いたあとの話ということも考えられるが、どうか。特に5巻「For…」前後はSpecial Package2での補完がされていることもあり、他巻よりも余白が少ないのも事実である。これまでのパターンで問題編→解決編の流れが出来ていることから見て、もし開花前だとすればFloweringステージの撮影風景、もしくは練習あたりではないか……と予測している。開花後であればFloweringステージが開催できなくなった結果のホームミニライブについてが大きなところか。

結城眞紘という人間の掘り下げに当たるので天霧社長の登場にも期待を寄せたいところだが……流石にないか……。1話の眞紘の夢や2話のステージ登壇前で匂わせてきた智紘の影の回収が一切ないので、智紘周りの情報について追加で出ることを期待している。

コミカライズでは、靴の中に入った小石のようなわずかな、しかし個々人が抱える大事なわだかまりを解消してきたという認識をしている。眞紘にとってのわだかまりはFor…で大きく動いたと個人的に考えているが、どのような話題が来ても生き残れるように……何しよう?

筋トレ、するか(なんで?)。

 

P.S. 解決編って綺麗にまとまるのであまり書くことがないなって書いてみて思った。